第壱章

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『ガー……ガー……報告します! ただ今旧カナダ気象観測地帯が『夢喰い』によって崩か……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』  部屋にあるラジオからそのような報告がノイズ混じりに聞こえる。 「またかよ」  部屋にいる弟の啓助(ケイスケ)がそうぼやく。 「ねぇここもそろそろヤベーんじゃねーの?」 「良いから黙って寝ろ」  俺は弟のために温かいミルクティーを作ってやりながら弟を静かにさせる。体が弱いのに無理して俺を手伝おうなんてするからこんなことになってしまったのだ。 「ほらお前の好きなミルクティーの甘いやつ」  俺が渡してやると啓助はパッと顔を輝かしてカップを受け取った。 「でもいくらここは日本に近いからって安心とは限らないよ?」 「ここは大丈夫って父さんも言ってたろ?」 「そうだけどさ……」 俺も自分のミルクティーを飲みながら今は何処にいるかも分からない父親を思い浮かべる。 「でもなんでご先祖様は海外なんかに移住したんだよ……。俺日本で平和に暮らしたかった」 「啓助! それは言わない約束だっただろ?」 「ゴメン兄ちゃん……」  俺がそう言うと啓助はすぐに黙りこくってしまった。 「だから今は体を休めろ。明日は俺が魚取って来てやるから」 「本当!?」 「あぁ本当さ。だからもう寝ろ」 俺はそう言いながら部屋にある蝋燭を消した。
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