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「こうすれば、濡れないだろ?」
尾形先輩は、僕の大好きな笑顔でそう言った。
もうっ、この人はこっちの気も知らないで。
どうしよう。
僕の鼓動の速さ、伝わってないかな?
こんな心配をする程に近い。
ふと顔を上げると、少し上に尾形先輩の顔。
もうっ、駄目。
心臓が持たない。
尾形先輩が部活のこととか、クラスのこととか色々話てるのに、内容が頭に入ってこない。
その所為で生返事しか返せない。
「あ、なんか雨足弱くなって来た。
この様子だと直ぐ止むかもな。」
「え、あっ、はい。」
そう言えばそうかもしれない。
尾形先輩のことで頭が一杯で、全然気付かなかった。
昇降口に居た時はあんなに恨めしかった雨だけど、今は止んでほしくない。
せめて、僕の家に着くまでは降っていてほしい。
そうすれば、もう少しだけ尾形先輩の温もりを感じていられるから。
だからお願い、雨よ止まないで。
fin.
2010.0616.
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