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そんな場でなお、ガードマンと少女の抗争は続いている。
「あのね、雪架さんがどこにいるなんて知らないし、知ってても言えるわけないでしょう?ファンだからって…いきなり押しかけてきても困るんだよ……はあ…」
「一目でも構いません!どうか逢わせて下さい!お願いしますっ!!」
少女はそう言うなりいきなり頭を床に押し付け、土下座しだした。
「ちょっ ちょっと君!!!?」
ガードマンは一瞬呆気にとられたが、すぐに正気に戻り、慌てふためく。
「頭を上げて!!そんなことされても………」
「逢わせて頂けるまでここを動きません!!」
「…はぁ……あのねえ君…………」
大きなため息と共に
ガードマンはこれ以上ないというくらい眉間にシワを寄せ顔を歪めた。
「とっ…………とにかく立って…!こんな入口でっ土下座なんかしたら目立つでしょう…!!」
少女の肩を持ち、無理矢理立たせる。
「お願いします…………どうしても逢いたいんです………雪架さんにどうしても…………逢わないと…………私…」
声が弱々しくなり、今にも少女は泣きそうだ。
「わっ……わかったよ…もう…とにかく話は聞くから……」
入り口の自動ドアの前から移動し、少女をロビーの椅子に座らせる。
「あのね、残念だけど……僕に頼んでも、土下座しても彼女には会えないと思わないの?」
「えっ……?どどうしてですかっ!?おじさん……ここの人なんですよね!?」
「どうしてって……確かに僕はここの人間だけど、ただの警備員だよ?なんの権利もない、ただの警備会社の社員。所属してる歌手に逢わせてあげられる権限なんかないから…」
「そ…う……っなんですか!?」
少女は驚きの声をあげ、落胆する表情を見せるがすぐに必死の形相にもどる。
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