…任務…

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カツン、カツン。 夜。 皆が寝静まった深夜。 綺麗に敷き詰められた石畳をブーツのヒールが高貴な音を立てる。 規則正しく響く足音。 その足音の人物はまだ幼さの残る少女。 腰より下まであるアクアマリンの髪。軽くウェーブがかかっており、まるで波間のようだ。 少女が纏っているのは黒い服。 シルエットがはっきりと世闇に浮かび、綺麗だ。 ふと、少女とは違う小さい足音が響いた。 足音は少女の背後。 すこし距離が有るようだ。 少女が足を止めた。 そして口を開く。 「遠慮がちに近づかないで下さいよ。 何かと思ってしまいますよ」 言って振り返る。 少女の腕にあるチェーンのブレスレットが満月の光を反射する。 月光で浮かび上がる少女はとても美しかった。 「お嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。 有り金置いて行きな」 足音の主…見るからに悪そうな男性がナイフの刃を出しながら言った。 その行為を目にしてもひるむことなく、少女は立っている。 少女は男性が一人だということを確かめて、口元に笑みを浮かべる。 「他に仲間はいないんですね」 「お前みたいなガキは俺一人で充分だからな」 ほら、金出せよ。と言いながら手を出す。 「一人で私にカツアゲしようとしたあなたが悪いんですからね」 言ってブレスレットに手を翳す。 淡い水色の光を発し、ブレスレットが宝石と共に水色に変化する。 それをチラリと視線で確認し、男性に視線を向ける。 短く息を吐き出し、瞬間的に男性の側へ移動する。 「なっ!」 男性は驚き言葉を失う。 急に距離を縮めて懐に入ってきたのだ。 それは驚くだろう。
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