…任務…

3/8
36人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
カツン、カツン。 夜。 皆が寝静まった深夜。 綺麗に敷き詰められた石畳をブーツのヒールが高貴な音を立てる。 規則正しく響く足音。 その足音の人物はまだ幼さの残る少女。 腰より下まであるアクアマリンの髪。軽くウェーブがかかっており、まるで波間のようだ。 少女が纏っているのは黒い服。 シルエットがはっきりと世闇に浮かび、綺麗だ。 ふと、少女とは違う小さい足音が響いた。 足音は少女の背後。 すこし距離が有るようだ。 少女が足を止めた。 そして口を開く。 「遠慮がちに近づかないで下さいよ。 何かと思ってしまいますよ」 言って振り返る。 少女の腕にあるチェーンのブレスレットが満月の光を反射する。 月光で浮かび上がる少女はとても美しかった。 「お嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。 有り金置いて行きな」 足音の主…見るからに悪そうな男性がナイフの刃を出しながら言った。 その行為を目にしてもひるむことなく、少女は立っている。 少女は男性が一人だということを確かめて、口元に笑みを浮かべる。 「他に仲間はいないんですね」 「お前みたいなガキは俺一人で充分だからな」 ほら、金出せよ。と言いながら手を出す。 「一人で私にカツアゲしようとしたあなたが悪いんですからね」 言ってブレスレットに手を翳す。 淡い水色の光を発し、ブレスレットが宝石と共に水色に変化する。 それをチラリと視線で確認し、男性に視線を向ける。 短く息を吐き出し、瞬間的に男性の側へ移動する。 「なっ!」 男性は驚き言葉を失う。 急に距離を縮めて懐に入ってきたのだ。 それは驚くだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!