花火の夜に 想い添え

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―――午後19時40分。 学生が行く夏祭りにしては、決して早くはない時間帯。 私は出店が並ぶ、ガヤガヤした場所は嫌いだったので、神社の裏にある人気のない、隅の辺りに腰掛けていた。 集合時間は19時半。 集合は家ではなく、本地集合で、5分前には顔を合わせていた。 無論、2人きりで。 それから数分、出店を回れば、 あまりの人の多さに私は人酔いしてしまい、今に至るという訳だ。 彼は飲み物を買いにいくと言ってこの場には居ない。 シンとした静寂に、 遠くからの祭りの賑わい。 まばゆかった光さえも、 すっかり此方までは届かない。 「…孤独、か」 何気なく呟いた独り言に、 思わず寂しさを感じた。 好きで【孤高の女王様】なんて やっている訳じゃない。 私は…私には、    ・・・・・・・・ 君が、夕哉が居てくれたから、皆と仲良く出来ていた… 「…!」 そこまで考えて、 私は、気付いてしまった。 ・・・・・・・ 夕哉が居たから、 私はずっと周りと仲良くしていた。 それは裏を返せば、 ・・・・・・・・・ 夕哉に執着するために周りと同化していたと言うことにならないか? 執着するのは、夕哉が…   ・・ 「…好き、だから?」 ・・・・・・・・ 夕哉が好きだったからなのではないか? 「う…そ…私…っ」 立ち上がり、口を覆う。 今、自分で…認めた? がくりと、うなだれる足元に気を遣うことができる程、今の私には余裕はない。 気付いた。 このタイミングで気付いてしまった。    ・・・・・ 私は…夕哉が好きだったんだ。 だからあの時… あんなにもショックを受けたんだ。 だからあの時… あんなにも怖かったんだ。 気付いてしまえば認めるのは早かった。 だからといって、どうしたら良いかなんて、分かるはずもなく… 「……っ」 私は再び、 唇を強く、強く噛み締めた。
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