花火の夜に 想い添え

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何故? とか、 どうして? とか… 人間は咄嗟の時に、 上手く反応出来ないらしい。 そう聞いたのは、いつのことだったか。 15年間生きてきて、そんな状況に陥ったことのなかった私は、そんなものは嘘だと思っていた。 3秒あれば、人間の感覚は電気の波となり、体内を駆け巡り、すぐに伝わる。 それが反応しなくなるなんて… どう考えてもあり得ない。 そんな考えはどこに行ったのか。 今、正しく私は その状況に陥っているのだ。 「…っ……どうして!?  こういうことは…  好きな人にしなさいよ!」 触れるだけの長いキスを終えれば、真っ先に叫んだ。 私らしくなんかなく、 感情を直に爆発させていた。 「―――好きだから」 その言葉に耳を疑う。 そして同時に、それが事実だとはとても考えられなかった。 「私…、私はっ…!」 狼狽える私に、 彼は柔らかな笑みを向けた。 ―――!!! 大きな爆発音と、盛大な喝采。 突然の出来事に動揺しきった私たちは、すぐには反応出来なかった。 「………」 「………」 数秒間の沈黙後、 ようやく動き出した身体で、 何事かと、空を見上げれば、 空には…大きな花が咲いていた。 正確には空に花が、ではなく 空に花火が、だ。 そう言えば夏祭りはメインイベントではなく、その序章だと言うことをすっかり忘れていた。 ドーン、ドーンといくつもの七色の光が辺りを生め尽くす。 よく見れば、今日はいつもなんかより、数段以上、星が綺麗で、花火が上がるたび、七色の光と星の瞬きが合わさり幻想的だった。
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