花火の夜に 想い添え

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「…綺麗」 なんだか拍子抜けしてしまうが、気付いた時にはそう口にしていた。 「そうだね、僕もそう思う」 そのセリフに、私は覚えがあった。 「夕哉…?」 思わず聞き返せば、 夕哉はうん、と微笑んだ。 「少しだけ、思い出したんだ」 そう言って、 夕哉は目を閉じ、すぅーと深呼吸。 「星空(アカリ)、  好きだよ、好きだ」 「…っ!!!」 星空… それは、私の名前。 夕哉は思い出してくれていた。 私の名を囁き、好きだと言ってくれた。 あの言葉の返し方は決まっている。 「嫌いよ、大嫌いっ」 私がそう言えば、夕哉は笑った。 あの頃と何ら変わらぬ、 純粋無垢な、その笑顔で。 私もつられて…自然と笑った。 それだけで伝わる。 私たちの意志は… 想いは繋がっている。 それはきっと、変わらない。 少しだけでも、 記憶が戻ったお祝いに… 一度だけ、 素直になって伝えよう。 「夕哉、好きだよ」 あの頃、 口に出せなかった、この想いを。 私たちの頭上には花が咲く。 ちょうど、今の私たちのように。
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