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スタスタと歩く。
目的地に迷いはない。
教室を飛び出してから、5分も経たないうちに、その場所に私は着いた。
「…はぁ」
短くため息を吐けば、私は空を仰ぐ。
目に入るのは午後のせいか、日光がいつにも増して強い太陽。
それに加え、澄み渡る程までに綺麗な青空が頭上には広がっている。
屋上から見るその景色は、
教室の窓から見る場合より、圧巻ではある。
けれど、私は決して、
青空が見たいわけではなかった。
「…夕哉(ユウヤ)」
小さく、夕の名を口にすれば、片手で顔を覆った。
何やってんの…私。
星空のことなんて、思い出したからいけなかったんだ。
夕哉がまだ、夕じゃなかった頃、
記憶を失う前に戻りたいなんて…
もう一度で構わないから、名前を呼んで、あの言葉を囁いてほしいなんて…
今さら、何て女々しいことを考えているんだか…
「…バカみたい」
私は吐き捨てるようにそう言った。
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