夏祭り 混乱

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「そういやさ、  今日、夏祭りあるくね?」 扉の前。 結局、午後の最初の授業をさぼった私が、教室に戻って初めて聞いたのはアイツのそんな一言だった。 「そうだけど…どうしたの?」 続けて夕の声が聞こえてきた。 教室の前の扉はガラス窓が付いていて、中の様子が覗き込める。 扉に手をかけ、ふと止まった私は、彼らの会話を何となく聞いていた。 「夕はさ、誰か誘ったりすんの?」 ニヤニヤ笑いながら奴は問う。 「そうだなぁ…僕は…」 夕はと言えば、顎に手を当て何かを考えるような仕草を見せながら言った。  ・・・・ 「大切な人を誘う、かな」 ―――どくんッ 一瞬、胸が飛び上がった。 「それはつまり…  ・・・・  好きな奴ってこと、だな?」 ニヤリと笑えば奴は夕の肩を子突いた。 あははと嬉しそうに苦笑いを浮かべる彼の姿に確信した。 大切な人がいるのだ、と。 ―――どくんッ、どくんッ 胸が騒ぐ。 いつもならば、気にせず、教室に入り、彼らを無視して、自分の席に着くはずなのに。 どうして…出来ない? どうして… 手どころか身体が動こうとしない? 「……っ」 強く唇を噛みしめれば、 再び、来た道を辿った。 わからない、わからない… どうして、 こんなことをしている? わからない… 否、わかりたくない。 私は……… 昔の記憶を思い浮かべながら、私は強く唇を噛んだ。
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