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『…夕哉?』
いつもなら、其処に居るはずの彼が居なかったのは、七夕を過ぎた、真夏の長い夜のことだった。
昔から、家が隣合わせだったこともあり、仲の良かった私たち。
小学校の高学年くらいから、私が毎晩、星空を眺めるのが日課にしたことも関係したのか、中学にあがる頃には、いつの間にか毎晩20時に、お互いが2階の自室のベランダで待ち合わせるのが私たちの中では暗黙の了解だった。
…それなのに。
あの日は、あの日だけは
夕哉はいつまで経っても姿を現せなかった。
そんな意志疎通は私たち以外、
勿論、お互いの両親も知らなかった。
だから、相談する訳にもいかず、
胸騒ぎを隠しながら、私は自室に戻り、今日は早めに眠りにつくことにした。
『夕哉…』
小さく名を呼べば、何も返ってはこない返答に、私の胸は不安で張り裂けそうだったことだけは、やけに鮮明に覚えている。
数日後、その理由を私は思いがけない形で知ることになる。
・・
「初めまして、じゃないはず
なんだけど、一応…
・・・・・
初めまして、
花咲 夕哉(ハナサキ ユウヤ)です」
朝、久しぶりに登校した、
紛れもない彼自身から、そう聞いた時に。
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