あの時の二人は

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月末前ということで今週は少しバタバタした ある日仕事帰りに『須藤さん、お客様見えてますよ』と女の子に言われ、ビルの下に降りていった 待っていたのは時任君だった 『よお、仕事してた?』 『ううん、もう終わったとこ』 『おごるからさ、近くの定食屋にいかないか?腹減っただろ?』 『うん…いいけど』 私はもう一度デスクに戻り帰り支度をした 会社の近くに、少し古い定食屋がある。でも味はよくて、お昼にもよくくる 『チキン南蛮美味しいわよ。私は…白身魚フライしようかな…』 『じゃあ俺チキン南蛮』 『あれからどうした?彼女と』 『会社行ってみた。で、会って話ししたんだ。お袋退院したら話しは必ず進めるからって…そしたら彼女、もういいって。私優先に考えてくれない人とは結婚できないから別れましょだって』 『で、そのまま引き下がってきたの?』 『引き下がるもなにも…話し噛み合わないしさ、もう結婚相手の中にあなた入ってないって言われたら、手の施しようないさ』 『はっきりした人ね…彼女さん』 『結局は結婚したいだけだったんだよ…俺とじゃなくてT建設の俺と…だろね』 『そっかあ…私はもうそれでよかったと思う。そんな気持ちで結婚しても長続きするのか疑問だしね…人事で悪いけど結果的には時任君、良かったんじゃない?』 そのあとは二人無言で定食を食べた 時任君はホントに彼女は好きだったんだと思う 慰める言葉もないし、口からなにも言葉が見つからなかった
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