あの時の二人は

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7月1日、私は約束通り、栗本さんを居酒屋にさそった 『沖縄風居酒屋あるからそこ行きませんか?』 『いいですね、行ってみたかったんですよ』と栗本さんは賛成してくれた お店の中はとても賑やかな音楽が流れ、陽気な店員さんが、席を案内してくれた 『よくくるんですか?』 『時々仕事場仲間とね』 まずはビールを頼んで乾杯した。メニューは定番のゴーヤチャンプル、チィビティーや島らっきょ、沖縄では定番だという魚のフライも頼んだ 『泡盛にマサヒロってあるんだけど、すっごく美味しいの。頼まない?』 『俺泡盛初めてなんですよ、大丈夫かな』 『すごくフルーティーだから大丈夫ですよ』と私はマサヒロを頼んだ 琉球グラスに注がれたマサヒロを飲んでみる 『やっぱり美味しい…』 『爽やかで美味しいですね、これなら僕も飲めます』 『あらためて、先月はありがとうございました』と私は頭を下げた 『参ったな、そんな大袈裟な事じゃないのに』 『あの時うまくいってなかったら、後輩の木下君のクビとんでたかもしれないし…私だってどうなってたか…』 『須藤さんみたいな優秀な人材、社長がどうにかするはずありませんよ。聞きましたよ、大阪にできる大きな商業施設をプレゼンで勝って持ち帰ってきたって』 『あれはね。すごい自信あった。大阪にはないもので飽きられないもの…って考えてたのね、東京の押し売りじゃなく関西の人に溶け込んでいくもの…そしたらぱっとイメージ浮かんで』と私は笑った 『ぱっとイメージが浮かぶって気持ちいいですよね。俺なんかもそうです。それが形になると…なんだか手放したくない衝動にかられますよ』 『それじゃあ家具売れないじゃない』と私は笑った 少しほろ酔いになった時、栗本さんが急に真面目な顔でこう言った 『すいません、俺…黙ってた事あるんですよ』 『なんですか?』 『俺なんです…』 『え?』 『フラれた奴って…』 『何?』 『5年前、井の頭公園で須藤さんと会った男、俺なんです!』 私は腰を抜かした
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