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そして3月が来た。店も思い通りに仕上がり、オーナーも大喜びである
パーティーで栗本さんと、顔を合わせたがお互い言葉を交わす事はなかった
裂けられてる気がした。だから私も目を背けた
時任君が名古屋に向かう頃だった。大阪の藤木さんが交通事故にあって、東京に戻ってきた
左足と肋骨の骨折でしばらく入院…
ところがその仕事が私に回ってきたのである
元は私がプレゼンでとった仕事なので、代わりにいくのが当たり前なのだが…
なにかもやもやした気持ちがまだあって、東京を離れたくなかった
仕事は4月から二ヶ月と短いものだったのでアパートはそのままにしてもらった。藤木さんが借りてたマンションに寝泊まりして、仕事をすることになった
私は一足先に名古屋に行く時任君を駅まで送って行った
『お前まで転勤とはな』
『私なんて転勤にならないわよ。でも意外と近くだね、頑張って仕事してきて』
『おお!帰ってきたらまた出世だ』と時任君は豪快に笑った
電車をずっと見送っていた。同級生が一人遠くなった…
居酒屋いっても、コンビニいっても、彼の姿はない
荷物を詰めて、アパートを後にして、居酒屋の大将にしばらく留守するからと挨拶しに行った
会社によりまた挨拶すると社長から、マンションの鍵や地図が渡された
大阪のビルは5月の終わりにオープンとなった
駅にいき新幹線に乗ってぼんやり窓を眺めていた
その景色の中に、立ち尽くす栗本さんの姿を見た
栗本さんは何か言ってた
私はわからなくて、彼にメールをしたが…返信がくることはなかった
こんな状況の私に何が言いたかったんだろうか
少しくらい…自惚れてもいいのかな。私は泣きながらずっと窓の景色を見ていた
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