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大阪での仕事はハードだった
何店舗か掛け持ちのため、ビルの中を行ったりきたりだ
『須藤さん、少し休憩してくださいよ』と現場のスタッフに言われる
『なんか頭がごちゃまぜで、上手く整理できないんですよ』と私は笑った
『でも須藤さんって、現場で働くほうが向いてるみたいですね』
『そうですか?』
『すごく生き生きしてる』
そうかもしれない、動き回っていないと完璧に電池の切れたおもちゃになってしまう
とにかく4月は各フロアー事のインテリアで追われた
ある日曜日、時任君が大阪に遊びにきた。難波という街で待ち合わせして、お昼を一緒に食べた
『どう?名古屋は』
『ハードスケジュールでくたくたさ。そっちは?』
『私もよ。来月オープンだからなんか焦っちゃって』
『うちはこれからだからな…でも結構食べ物は美味しいから安心してる』
『大阪も!どこいっても美味しいわよ。でもなんかさ…あのアパートじゃないと落ち着かないの…あの居酒屋とね』
『それは言えてるな…』
『それでもお互い目の前の仕事全うしなきゃね』
『そだな…あのさ…連絡とかないの?』
『あるわけないじゃない』と私は笑った
『あるわけない…なのに…なんで見送りなんてきたんだろ…そんなことしなくていいのに…』と私は俯いた
『見送りにきたのか!』
私は涙をぽろぽろ流して頷いた
『ズルイよ…あんなの』
『泣くな!須藤!だったらなんで電話して話さないんだ!お前達少し意地の張り合いしてるし、お互い誤解してないか?』
時任君は怒鳴った
私はびっくりして、時任君を見た
『ダメとかって決め付けるの早いって俺言ったよな?もう一回、喧嘩してでもいいから話ししろよ…前進どころか後退ばかりじゃないか!』
時任君は私にハンカチを渡すとそう言った
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