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「いや、ちょっとな・・・」
「すみません。俺、傘持ってたんすけど・・・」
「明も持ってたでしょう!!?」
「あ―・・アンナに貸してやったんだよ・・」
「そうなの・・・まぁいいわ。そのままじゃ風邪ひいちゃうから、今タオル持って来るわねッ!!」
そう言って母さんは香川を上がらせると部屋の奥からバスタオルを取り出してきておれ達二人に渡した。
あれから、おれ達結局その場で言いあいになっちまって・・・唯一の傘も言い合いの時に突風が来て飛ばされちまった。
それから急いでおれの家まで来たが、結局ずぶ濡れ。
「わ、悪かったな・・・」
「?・・・何がだ?」
「いや、なんつーか。結局こんなんなっちまって。」
「お前だって一緒だろう。」
「いやおれはいいんだよ!お前、帰り遅くなるし・・・お前の親、厳しいんだろ?」
「気にするな。・・・それに、嬉しい。」
「へ?」
「北見の家にまた来れて、嬉しい。」
そう言うと香川はおれに向かって笑った。
な・・・・ッ!!!不意に笑うんじゃねぇよ・・・ッ!!!
普段笑わないからおれは一瞬戸惑って、思わず香川から顔をそらした。
「べ、別に・・・!!おれん家は近いんだし、いつでも来ればいいじゃねぇかよ・・」
「・・・そうだな。じゃあ今度はアンナと一緒に来ることにする。」
「あ・・・お、おう・・」
あ・・・お前1人じゃねぇんだ・・・
「――っておれは今何を・・・・ッ!!!?」
「?・・どうした北見?」
「ひ、ひやッ!!!?なんでもひゃいッ!!!」
「・・・言葉おかしいぞ?風邪でも引いたか?」
「ち、ちが――――」
「アンタ達ぃ――お風呂の準備出来たわよ――身体冷える前に入っちゃいなさい!」
おれの言動に変に心配した香川がおれの額にまた手を伸ばそうとしたとき、風呂場から母さんが叫ぶ。
ひ・・・た、助かった・・・・
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