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真っ暗な暗闇の中をひた走る。 走っても走っても距離は広がらない。 寧ろそれはじわじわと彼女に迫りつつあった。 「はぁっ…はっ…ッ。」 怖い怖い怖い。 捕まりたくない。 その一心で彼女は駆ける。 うごめく《闇》が迫り、そこから幾本もの『腕』が彼女を求めて伸びてくる。 「!!?いやぁっ…ッ!!」 髪に、首に、腕に、脚に、身体に。 絡み付き、締め付け、ぎりぎりと引かれる。 ――捕まってしまった。 もう、逃げられない。 四肢が引きちぎられそうな程の激痛。 彼女を捕らえた《闇》は、今度は別のものをその身の内から伸ばしてくる。 「ひっ……っ。」 かちかちと歯を鳴らし、食らいつこうと迫る、いくつもの《口》。 彼女を喰らおうと、貪(むさぼ)ろうという明確な意思の元に。 怯(おび)える彼女のその反応さえ愉(たの)しむように、じりじりと近付く。
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