必然 > 偶然

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いつものように職権を乱用した太子に呼び出され僕は法隆寺にと出向いた。 おみやげを持ってこいだのうるさいから仕方なく今回はチューリップの球根を持っていってやるつもりだ。 さすがに石や草は食べなくても球根なら 『わぁお!なんだかにんにくみたい美味しそう!』 とか言って案外食べるかもしれない。 そういえばもう一つ。 最近少し気になる事があった。 太子が嫌ってくらい真剣な顔をして物思いにふけているのだ。 もちろんあまりの気持ち悪さに僕はついちょっかいを出してしまうのだが 何かあったのかと訪ねても白を切るばかり。 せっかく二人きりになるなら問いただしてやろう、と僕は笑みを浮かべた。 僕と太子はあまり公認でもないが一応恋仲だ。 まぁお互いここぞと言う時に緊張するタイプだから発展してもキスぐらいなんだけど。 太子は少し乱暴な人だと思ってたが、まったく見当違いだった。 正直たくさん苛められるとばか……断じて僕はMじゃないですからね。 少し人より殴られたりするのが好きなだけです。 まあそんなこんなで気付けば目的地にと着いた。 冒頭で僕は「法隆寺」と言ったがあいにくこれは寺じゃない。 最早小屋と同様。小汚い建物ですよまったく 「太子―来ましたよ」 変哲のないドアを何度かノックすると忙しない足音が響きドアが勢いよく開いた 「うぇるかむ妹子!」 「はぁどうも」 いつにまして元気な太子を鬱陶しいと思いつつ中へ入ろうとすると太子が待ったをかけた 「なんですか」 「おみやげだよ!お!み!や!げ!」 「あぁ、ちゃんと持ってきましたよ」 僕はそう言って包みを太子に手渡す。 玩具を受け取った子供のように太子は中身を確認した 「わぁお!なんだかにんにくみたい美味しそう!……って球根じゃんかぁあ!」 「球根ですけど?」
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