必然 > 偶然

3/3
前へ
/29ページ
次へ
「ばか芋!私そんなの食べるわけないじゃん!毎回変なのばっか持ってくるなよなあ」 大げさに溜め息を吐く太子を無視して僕は法隆寺の中へと入った。 「はい、お茶」 太子は僕の目の前に湯のみをおく。 「ありがとうございます」 「普通こういうのって妹子がやるんだよね。あれ…私聖徳太子だよね?」 「そうなんじゃないですか」 あほな太子の言葉を軽く長しながら僕は太子の顔をじ、と見つめた。 やはりどこか悩んでいるような、葛藤しているように僕には見えた。 「ねえ太「あのな」 見事に遮ぎられ、僕は口を閉じる。 申し訳なさそうに僕の方をちらちら見ながら、それでいてモジモジとする様子が腹立たしい 「なにかあるならはっきり言ってください」 「……怒らない?」 「えぇ、怒りません」 「嫌いにならない?」 「まぁ、多分なりません」 「ショックかもよ?」 「かまいま…ってか早くしろ!」 「う、分かったよ」 「……」 「私実はね」 「はい」 「女なんだよ」 「あぁそうですかやっぱり下らな……………え゛?」 あまりに恐ろしい事実に僕は固まった。 今。 なんて言った? 「た、太子…あの…今なんて」 ありえないくらい上昇する心拍数。 太子は少し俯きながら言った 「だ、だから…私ほんとは女なんだって」 「…………」 嘘だと、だれか言ってくれ頼む。 このカレー臭だが加齢臭だかするオッサンが…女? 「…ほ、本気ですか」 「じゃなかったらこんな緊張しないよ」 「………」 「あ、なんなら確かめるっ?」 太子はそういって自分のジャージの中に手をいれると何やら包帯を抜き取る 「ま、まさかそれ」 「さらしだよ」 まっ平らのそこに現れたのは大きな山が2つ。 太子が女性であることを確信させる動かぬ証拠がそこにはあった。 僕はあまりの衝撃で眩暈がした。 今まで太子が女とも知らずにキスされ、付き合ってたのか 「なぁ、嫌いになった?」 太子が不安そうに聞いてくる。 いいや、むしろ逆だ。 だって 「すみません太子。……実は、僕も女です」 その直後、太子の驚愕の声が響き渡ったのは言うまでもない。 (終)
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加