あなたの音

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とくん とくん あなたの胸に抱かれていれば響く音。 なんて心地がいいのだろう 僕は目を閉じた。 「珍しいね」 僕を抱きしめる太子が笑う。 「…何がですか」 「お前が素直だ」 「ふん」 たまにはいいでしょう、と付け加えて僕は太子の背中に腕を回した。 「なあ妹子」 「なんですか?」 「こうしてると、お前の音が聞こえる」 「…ですね」 とくん とくん 生きてる音 今ここに居る証 「私怖いんだよ」 「なにが?」 「音が一つなる度、私は死に近付いてるんだなぁって」 普段大人ぶって生意気な太子がそんなことを言うから、僕はびっくりして太子の頬をそ、と撫でた 「っ」 「大丈夫です、太子」 この音が止まるときは 二人一緒ですから、 そう言って笑みを浮かべれば、太子は困ったような苦笑いを見せて僕をまた強く抱きしめた。 とくん とくん とくん 音はいつまでたっても 止まりはしなかった。
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