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「あら、秋那。おかえりなさい。その子は……」
「ただいま。あのね、」
「ちょっと待って、当ててみせよっか。えっとね、レイ君かな?」
固まってしまう。秋那に腕を小突かれて、ようやく「あ、はい」とだけ返した。
「やっぱり。貴方がコスモスの彼なのね。やっと会えたわ」
コロコロと笑うその女の人は、何と言うか、ずっと前から抱いていた、秋那の母親という第一印象そのままの人だった。秋那の二十年後を具現化したような人で、ポニーテールをほどいた秋那と並ぶと、もしかすれば年が離れた姉妹と言われても信じてしまうかもしれななかった。
「貴方が秋那にくれたコスモス、とても綺麗だったわ。あの子より私の方が気に入っちゃってね、私の方が熱心に世話をしてたの。レイ君にとっては……残念かもしれないけどね」
「いえ、そんな。気に入ってもらえたならよかったです」
秋那の母親に勧められて、横に座らせてもらう。秋那自身はというと、着替える為に部屋へと引っ込んでしまった。今は、俺と秋那の母親のふたりが二人がリビングで手探りの会話を展開していた。
「だから今年も、あの子に買いに行ってもらったんですよ」
恐縮した言葉しか出ない俺に、ふんわりと笑う隣の女性。手探りでいるのは、俺の方だけだった。
「でも、秋那だけでなくえっと……」
「ああ、ごめんなさい。私の名前は、飾磨渚(なぎさ)よ」
名前を呼べずにいた俺に助け船を出すように自己紹介を渚さんはしてくれた。その後すぐに秋那も合流して、しばらくはソファーに三人掛けの状態で様々な話を繰り広げていた。
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