花言葉

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「ん……」  艶っぽい呻きがベッドに落とされる。もういい加減、慣れてきてもよさそうな秋那の唇の感触は、触れる度に新しい興奮を更新する。目の前には、今にも眼球に入り込んできそうなほど長い睫毛がこちらへと伸びていた。  肩に手を回し、そっとこちらに引き寄せた。舌を使って彼女の唇をこじ開けようとすると、微かに喘ぐ声がした。それを見逃さず、舌をさらに深く潜り込ませていった。  まるで本能的にわかっていたように、俺の舌先は相手の舌や歯茎を撫で回す。鼻から漏れる息を極力抑えようとすると、必然的に秋那の口へと流れ込んでいき、お互いの口からこぼれる声が多くなっていった。  そっと、秋那の背中をベッドに押し倒した。その時に一際高い声を上げた彼女の胸元に、首に回していた左手をそっと持っていく。指の腹に力を入れると、最初はブラジャーで固かったそこがゆっくりと沈んでいった。  俺が知る何より柔らかいそこと反比例するように、俺のそこはこれまでにはちょっとないくらいに強張っていて、ズボンを今にも突き破ろうとしていた。  そうだ、と思った。  今の俺は、慶次の部屋で鑑賞したアダルトビデオで、女優達が演じていた導入の光景とちょうど同じようなことをしているのだ。  いったん客観的に自分達を想像すると、ベッドの脇から、誰かに撮られているような錯覚に陥る。それも、とてもチープなハンディカメラで。  順序は、きちんと踏んでいる。あまりこういう義務的に思える考えはしたくないのだが、ここまでに至る過程を済ませて、その上で俺たちは行為の中にいる。誰にも咎められることはないはずなのに……。  どうして、こんなにも後ろめたい気分になるのだろう。
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