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「歩実っ。蒼空!」
「あっ、お父さんだ」
「しまった。全然走ってないよ。怒られるかな」
蒼空はまずい顔をした。
「急いで行こう」
「うん」
2人は慌てて走り出した。
「お前たちどこを走っていたんだ?全然姿が見当たらないから心配したぞ」
広志は二人の姿を見て安心して言った。
「走って疲れたから寝転がっていたの」
「そうか?それならいいんだが…」
歩実は蒼空と目が合うとにっこり笑った。これは二人だけの秘密なのだ。
「おじさん、ピッチング練習はいつから?」
蒼空は話題をそらして言った。
「チッ、チッ、チッ。まだまだだよ。まずはキャッチボールからだ」
「そうですか…」
蒼空の目に失望の色が浮かんでいる。
「何もがっかりすることないじゃないか?これから嫌になるぐらい放ることになるんだからな」
広志は蒼空の肩をポンと叩いて慰めた。
「そうですけど…」
「まあ、しばらく使っていなかった肩だ。ゆっくり行こうや。ほらっ」
広志は蒼空のグローブを放り投げた。
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