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蒼空は慌ててグローブを両手で受け取って左手にはめた。
左手にグラブをはめるのは久しぶりだった。懐かしいあの感触が蘇ってくる…
「おっ、顔付きが変わって来たぞ。いい顔だ。なあ、歩実?」
「ええ…そうね」
歩実は急に広志に振られ内心焦ったが、うまくコメントをすることができホッとした。
蒼空のいつものホ~ワンとした顔から、真剣な眼差しになった表情に歩実もドキッとしたのだ。
「パンっ」
「スパンっ」
歩実がボーっとしていたところから我に返ると、広志と蒼空のキャッチボールがすでに始まっていた。
(ああ…この感触だ。ぼくの腕は忘れていない)
蒼空は再び右腕で投げることの喜びを噛みしめていた。
蒼空は一球、一球、気持ちを込めて投げた。距離にしてわずか十メートルもない距離だが、投げられることが楽しかった。
(蒼空君の表情、なんだか生き生きしている…)
そんな蒼空を横で見ていることが歩実は嬉しかった。
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