投球フォームを完成させろ。

12/22
前へ
/776ページ
次へ
歩実が黙っていると広志は話し出して言った。 「歩実はいいさ。蒼空がいるからな。蒼空といちゃいちゃしてさ。なんか俺、寂しくなっちゃって。帰って来ちゃったよ」 「お父さんもしかして…」 歩実はとっさに広志が飲んでいると思った。 「ああ、そうだよ。飲んでるよ。あゆちゃんにつまみを作ってもらってね。だから迎えに行けないよ」 「ちょっと…それって、あたしたちに歩いて帰って来いってこと?」 歩実は呆れて言った。 「うん、そう言うことになっちゃうかな。違うのは走って帰って来いってこと。あっ、あゆちゃんが呼んでる…トレーニングだと思って頑張れ。じゃあな」 「ちょっと、お父さん、お父さん。まだ切らないでよ!」 広志は一方的に電話を切ってしまったのだ。 「歩実ちゃん、どうだった?」 蒼空は心配そうに歩実に聞いた。 「やられたわ。すっかりお父さん、出来上がっているみたいなの。走って帰って来いだって。嫌になっちゃうわ」 広志のせいで二人は、バッティングセンターから走って帰るはめになってしまった。歩実の家に着くと広志が蒼空の体を揉んでくれた。走って帰ってきた疲れがふっ飛ぶぐらい気持ちが良かった。  
/776ページ

最初のコメントを投稿しよう!

694人が本棚に入れています
本棚に追加