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歩実が黙っていると広志は話し出して言った。
「歩実はいいさ。蒼空がいるからな。蒼空といちゃいちゃしてさ。なんか俺、寂しくなっちゃって。帰って来ちゃったよ」
「お父さんもしかして…」
歩実はとっさに広志が飲んでいると思った。
「ああ、そうだよ。飲んでるよ。あゆちゃんにつまみを作ってもらってね。だから迎えに行けないよ」
「ちょっと…それって、あたしたちに歩いて帰って来いってこと?」
歩実は呆れて言った。
「うん、そう言うことになっちゃうかな。違うのは走って帰って来いってこと。あっ、あゆちゃんが呼んでる…トレーニングだと思って頑張れ。じゃあな」
「ちょっと、お父さん、お父さん。まだ切らないでよ!」
広志は一方的に電話を切ってしまったのだ。
「歩実ちゃん、どうだった?」
蒼空は心配そうに歩実に聞いた。
「やられたわ。すっかりお父さん、出来上がっているみたいなの。走って帰って来いだって。嫌になっちゃうわ」
広志のせいで二人は、バッティングセンターから走って帰るはめになってしまった。歩実の家に着くと広志が蒼空の体を揉んでくれた。走って帰ってきた疲れがふっ飛ぶぐらい気持ちが良かった。
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