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「いいか、蒼空。思い切り振り上げると背筋が鍛えられるという訳だ」
「なるほど…」
蒼空が感心して言うと歩実が横から口を出して言った。
「お母さんに畑を耕してって言われていたけど、なかなか腰を上げないお父さんにとうとう怒りが爆発したのよ。仕方なく畑にきたけど、蒼空君もいい災難ね」
「えっ?」
蒼空がいつの間にか手伝うはめになっていたのだ。
「よし、蒼空。昼まで頑張ろう。背筋がめちゃめちゃ鍛えられるぞ」
「はい…」
蒼空は広志にうまく使われたと思ったが、土をすき返し始めた。
蒼空に畑仕事を手伝わせていた広志は、隣の畑のピーマンに水をやっていた老夫婦と話しをしていた。
「だいぶ育ちましたね。いつから来てやっているんですか?」
「あ…お隣りさんですか?気づきませんで…わたしらは五月からきて畑をやっとります」
「五月ですか?早いですねぇ」
広志は心底感心して言った。
歩実にしてみれば広志が遅いだけの話である。
「野菜は時期を逃すと成長が急に止まるでな」
「本当ですか?」
広志は驚いて言った。
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