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「それではまた後で…」
老夫婦の下を後にすると歩実は広志に言った。
「蒼空君にばかり働かせて、恥ずかしくないの?」
「恥ずかしい?ははは。蒼空は仕事だと思ってないよ。トレーニングだと思っているさ」
広志は笑いながら言った。
「蒼空君が可哀想。もうそんなことしなくていいって言ってくる」
歩実は走って蒼空の下に駆け寄った。
「蒼空君、お父さんねぇ、蒼空君に働かせて楽をしょうとしているのよ」
「え、何か言った?」
蒼空は作業を止めて歩実の方に振り返った。
「お父さんね、お母さんに畑を耕してって頼まれていたのに、サボっていたのをあなたに押し付けたのよ」
「分かってるよ。歩実ちゃん」
蒼空はにっこり笑って答えた。
「分かっているのにどうして?」
一生懸命に働く蒼空の気持ちが歩実には理解出来なかったのだ。
「トレーニングだと思っているからさ」
蒼空は額の汗をタオルで拭きながら答えた。
「歩実、ちょっと買い物に行ってくるから」
広志は申し訳なさそうに歩実に声を掛けた。
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