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「ぼくに話って?」
蒼空が歩実に聞いてきた。歩実はドキドキしながら話し出した。話はとてもデリケートなものなので蒼空を落ち着かせる必要があるのだ。
「よく聞いてね。蒼空君」
「うん」
蒼空が真剣に聞いていると思えば思うほど歩実は緊張してきた。
「ここの横島整形外科は、あたしのお母さんが長く勤めていた病院なの」
「へぇ…」
「今は2年前に、院長が若い看護師と駆け落ちして閉鎖されてしまっているの」
「そうなんだ…」
(さてこれからどういうふうに話を繋げようかな…)
「蒼空君、この病院でひじを診てもらったことがあるわね?」
歩実は蒼空の顔をまともに見て言った。
蒼空は驚いて歩実の顔を見返していた。
「どうしてそれを知っているの?」
当然の疑問だろう。
「あたし聞いちゃったんだ。あの時…」
「あの時って言っても、もう五年も前のことだよ」
(蒼空君にとってはすでに過去のことになっているのかな?)
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