694人が本棚に入れています
本棚に追加
「今のは75メートル!」
「75メートルか…最初にしちゃ、上出来だ。ほら、感心してねえで次はお前だ」
今度は蒼空ではなく、上園の逆の端にいた阿部が原田主将に指された。
「あっ、はい。1年6組阿部健です。あっ、キャッチャー志望です」
阿部は慌てて返答した。まさか次の順番が自分だと思わなかったのだ。
「やあっ」
阿部は気合いと共に勢いよく投げた…。
阿部の投げたボールは上園のところまでは届かなかった。
清原が身をかがめて測り始めた。
「え~と、64メートル」
「キャッチャー志望がライト志望に負けたぞ。キャッチャーは、やらせられるか分からんな」
原田は阿部に向かって言った。原田はなかなかの皮肉屋なのだ。そしていよいよ、蒼空の番がやってきた…
蒼空は青空の広がる空を見上げ深呼吸した。右投げから左投げに変更した蒼空にとって、遠投はかなりきついことなのだ。
(もう投げるしかない。まさか入部にテストがあるなんて。仕方ない…)
「1年3組、倖田蒼空。ファスト志望です。行きます」
最初のコメントを投稿しよう!