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歩実は不安を押し殺して横島病院の中をどんどん歩いて行った。
(暗くてよく分からないわ。でも確かこの辺りだったかな?あったわ!良かった…)
「ここよ。五年前にあなたと初めて会った場所」
歩実は男性用トイレの前で立ち止まった。
「えっ、秋山さんとこんなところで会った?」
蒼空のびっくりした顔が暗くても歩実は容易に想像できた。
「そうよ。あたしはヤンキースのキャップを被っていたわ。あなたには男の子にしか見えなかったかもしれないわね」
歩実はにっこり笑って言った。
「あっ!」
蒼空は思い当たることがあった。ようやく歩実との接点が繋がったのだ。
「ようやく思い出してくれたみたいね。あの時会ったのがあたしよ」
蒼空はすべてを思い出しした。あの時あの子はぼくに何か言おうとしていたっけ…
「さあ、あたしの正体が分かったところでここを出ましょう」
歩実は時間も気になって蒼空を促した。一刻も早くここを出たいという気持ちもあったのだ。
「えっ、どこへ?」
(蒼空君、付き合ってくれるかな…)
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