694人が本棚に入れています
本棚に追加
「倖田蒼空だって?」
「どこかで聞いたことがあるぞ」
「ほら、小五年の時に肩だかひじを壊してダメになった奴じゃなかったか?」
「ああ~、そう言えばそんな奴がいたな。あれからは全然ダメだったっけ」
「しっ。聞こえるぞ」
(もう聞こえてるっちゅうの…)
倖田蒼空の名前を聞いて新入生たちはざわめいた。一度は聞いたことのある名前だったからだ。
蒼空はもう馴れてしまっていた。小五年の時に達成したノーヒット、ノーランの記録は遠い昔のことになっていた。それから伝説になった怪童神話。
しかしそれも、野球ひじで医者からもう投げるな。野球を辞めるろ。と言われ投手から野手に転向した蒼空にとって、過去の栄光でしかなかった。
(蒼空?どこかで聞いたことのある名前…)
マネージャー志望の秋山歩実の耳にも、新入生たちのそんな話声が聞こえてきた。
(あっ!あの子だ)
最初のコメントを投稿しよう!