プロローグ

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  その日の秋空は蒼空(そら)の気持ちを、代弁するかのように朝からぱっとしないものだった。 昼近くからポッポッと雨が降り出し、午後になると天気予報通りの大雨となった。蒼空はというと、授業も上の空で校舎の窓から外ばかり眺めていた… 倖田蒼空は開成小学校に通う五年生。周囲からは将来、プロ野球選手になるだろうと期待される、何十年に一度出るかの逸材との呼び声が高かった。 国語の授業も終わり算数の授業になっても、相変わらず、雨模様の校舎の窓から外を眺めていた。 「はぁ…」 蒼空がため息をついた。 そんな蒼空の様子を隣の席の上園彰は見て言った。 「なぁ~蒼空。何んでそんなに窓ばかり眺めてる?雨で練習が出来ないからか?」 「いや…」 そう返答したきり蒼空は沈黙したままだ。 上園彰は蒼空の才能を見て驚いた一人だ。打算的な上園は蒼空に取り入り、自分も蒼空とバッテリーを組みプロ野球の選手となって、大儲けをするという密かな未来予想図を立てていたのだ。  蒼空は帰りのホームルームが終わると、上園が友達とだべっているのを、これ幸いと急いで学校を後にした…  
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