694人が本棚に入れています
本棚に追加
/776ページ
島本歩実はその日、母親の勤める横島整形外科に向かっていた。母親のあゆ子と病院が終わった後に、買い物に行く約束をしていたのだ。
歩実の大好きなワンピースを買ってもらうつもりだった。気持ちはウキウキしていたがその日の天気は最悪だった。大粒の雨が午後から降り始めた。
「ああ、雨さえ降らなかったら最高なのに…」
歩実は横島整形外科にたどり着くと、丁寧に雨の滴った傘をたたんでしっかりボタンで閉じた。
横島整形外科と書かれたスリッパを、雑に入れられているダンボールから引っ張り出し履いてみる。
歩実の足はまだ小さいので、横島整形のスリッパはとても大きく感じた。
「子供用のスリッパがあればいいのになぁ~」
いつも感じていることをまた口に出して呟いた…
歩実は自分が来たことを知らせるために、ナースの詰め所に向かった。その途中、院長の横島とすれ違った。
院長の横島は歩実の姿を見つけると笑って言った。
「おや、歩実ちゃん。いらっしゃい。とっても女ぽくなってきたね。将来が楽しみだよ。だんだん可愛くなるなぁ」
最初のコメントを投稿しよう!