プロローグ

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    島本歩実はその日、母親の勤める横島整形外科に向かっていた。母親のあゆ子と病院が終わった後に、買い物に行く約束をしていたのだ。 歩実の大好きなワンピースを買ってもらうつもりだった。気持ちはウキウキしていたがその日の天気は最悪だった。大粒の雨が午後から降り始めた。 「ああ、雨さえ降らなかったら最高なのに…」 歩実は横島整形外科にたどり着くと、丁寧に雨の滴った傘をたたんでしっかりボタンで閉じた。 横島整形外科と書かれたスリッパを、雑に入れられているダンボールから引っ張り出し履いてみる。 歩実の足はまだ小さいので、横島整形のスリッパはとても大きく感じた。 「子供用のスリッパがあればいいのになぁ~」 いつも感じていることをまた口に出して呟いた… 歩実は自分が来たことを知らせるために、ナースの詰め所に向かった。その途中、院長の横島とすれ違った。 院長の横島は歩実の姿を見つけると笑って言った。 「おや、歩実ちゃん。いらっしゃい。とっても女ぽくなってきたね。将来が楽しみだよ。だんだん可愛くなるなぁ」  
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