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嫌な笑いを浮かべる院長の横島が歩実はどうも好きになれなかった。歩実は軽く横島に会釈をすると、素早く母親のあゆ子のいるナース詰め所に駆け込んだ…
そんな歩実の後ろ姿を見て横島院長は呟いた。
「ふっ、まだまだおぼこだなぁ~」
ナース詰め所に歩実が入って行くと、あゆ子は包帯を巻き直して次の患者に備えていた。歩実の姿を認めるとあゆ子はにっこり笑って言った。
「歩実ちゃんお帰り。もう少しで終わるからおとなしく待っててね」
歩実はこっくり頷いてあゆ子に答えた…
歩実があゆ子の同僚の看護師と話していると、診察室の方から横島院長の声が聞こえてきた。若い患者と話しているようだ。
「ふむ、それでいつからひじに違和感を感じるようになったのかな?」
「今年の夏休みの頃からです。少しひじが痛いなと思いました」
「ふむ、どれどれ…」
横島が若者の腕を観察する気配が感じとれた…
「あ~これはダメだ。野球ひじだな。こうなってしまっては野球を辞めるよりないな」
少年の悲痛な声が聞こえてきた。
「そんな…」
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