プロローグ

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 詰め所を飛び出した歩実は少年をすぐに見つけられると思った。病院のなかはそんなに広くないのを知っているからだ。 しかし、少年はなかなか見付けられなかった。待合室を見てもいなかった。 「あれ?いない。どこにいるのかな…」 階段を上って二階へ行ってみることにした。二階は入院患者のいる施設となっていた。 「まさか…二階にはいないわよね」 ゆっくり階段を上り、二階につくとおそるおそる左と右の廊下を見渡した。 しかし、少年の姿は見あたらなかった… 仕方なく歩実は待合室のある一階に降りてきた。 (もしかしたら?) 歩実は男性トイレのドアをソッと開けて見た。 (いた!) 男性トイレには先ほどまで、横島と話していたであろうと思われる少年がいたのである。 少年は歩実がトイレに入って来ると、サッと手の甲で涙を拭いた。 少年は歩実を観察した。しかしすぐに女の子だとは思はなかったはずである。歩実の格好はハーフパンツにヤンキースのキャプを被っていたので、見る人が見れば男の子と思うことだろう。 しかも、髪はベリーショートだったのだ。 いつまでも立っている歩実を見て、少年は素早く涙を拭うと言った。 「何?何か用?」  
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