439人が本棚に入れています
本棚に追加
***
ハァ……
ハァ……
ハァ……
身体が、重い。
いや、違う……。
……違うのだけれど、
とても重苦しい。
「……早く、行かないと」
身体から力が抜けていく。
こうなることはわかっていた。
僕はもう、――《残像》でしかないのだから……。
だけど、それでも。
「早く、行かなきゃ……アリスの為に」
抱えた荷物を一度下ろし、大きな帽子の鍔(つば)をキュッと握った。
「これは……みんなに怒られるかな……」
自嘲っぽく笑ってから、もう一度腕に力を入れて荷物を抱え込む。
月は既に三日月を越した。もう時間にも僕にも、余裕がない。
少しでも力を抜くことは出来ない。
まだ、もう少し……。
もう少しだけ……存在することを許して下さい……。
最初のコメントを投稿しよう!