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頬をくすぐる何かの感触に目を開くと、一面の茶色が目に入った。風が強く吹き付けて、少し寒く感じられる。
あれ……私、何してたんだっけ……。
そう思って、身体を起こした瞬間、悲鳴を上げた。
高い上空を飛んでいたから。いつの間にか夜が明けていて明るく、綺麗な景色が流れていくけど、今は感動してる暇なんかない。
“気が付いたか?”
「え! グリフォン!?」
ふわふわな毛と茶色の羽の持ち主はグリフォンだったようだ。
少し安心して、私は口を開いた。
「ねぇ、私なんでグリフォンの背に乗ってるの?」
“ああん? 覚えてねぇのか。チェシャが行った瞬間、勝手に気絶しやがったこと”
嗚呼、そういえば激しい頭痛がして、意識を手放した気が……。
グリフォンの言葉に納得しながら、鷲の頭をじっと見つめた。
「ねぇ、グリフォン……私、夢を見た気がするの。物凄く懐かしくて、幸せだった頃の……」
バサッと力強く羽ばたきを一つしてから、グリフォンは応えてくれた。
“……温かい記憶だな”
言葉の真意はわからなかったけれど、少し嬉しげで寂しくて切ない声だった。
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