第一章【隊長の、ヒミツ】

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「相模っ! テメー定例会議またサボったろ! 何度言ったらわかる!」  勢いよく開いたドアの前にいたのは、ユウイもよく知っている櫻庭 大和第三部隊副隊長だ。その表情はまさに鬼そのものである。鬼だが。 「あー、ごめんね櫻庭ー」  相模の方は反省の色はまったくない笑顔。これがいつものやりとりだが、櫻庭の怒りは収まりそうもなく「テメェ……」と低い声を吐き出している。 「……」  いつの間にか、櫻庭の背後に長身の男が無表情で立っていた。長髪は白く透き通っており、瞳は血のように赤い、白衣の男。 「あ、ファルス主任! 遅かったじゃないですかー」  クロードが右手を上げ、その男に挨拶をする。  しかし、相手はいつまでも無言だ。まるで人形のように表情すら崩さない。しばらくしてため息交じりに言葉を発する。 「あぁ、悪い。最近ろくに寝てなくてな……」  その言葉にクロードは無理もない、と男から視線を外し書類に目を向ける。ここ最近は悪鬼に関する事件が多発していて、今回の定例会議もそのことについての会議だったのだ。 「あ、多分ユウイちゃんはクロード以上に知らない人だろうから一応紹介するね、ユウイちゃん。この人はファルス・ヴァズルフ。医療班の主任で、優秀な研究者でもあるんだ」  相模の言葉に、ユウイは会釈をする。確かに聡明に見える、物静かな男性だ。 「あ、ファルス主任、定例会議どうでした?」  ファルスは医療班全体をまとめる役でもあり、定例会議にも医療班の代表として出席している。 「どうしたもなにも、お前のサボりでかなりの時間を浪費した。志那も苦笑いだったぞ。減棒やクビも考えた方がいい」 「えっ」 「えっじゃねえよ」  櫻庭は腕を組みながら相模を睨みつける。 「相模の旦那は本当、こういうところがなければ優秀なんですけどね」  クロードの言葉に、ファルスは「人として致命的だろう。私が志那だったら原因次第では一度目でクビにしている」と頭を抑える。
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