第一章【隊長の、ヒミツ】

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「相模は元々、指揮と狙撃をさせればこの幻想世界に勝る者はいない、と呼ばれた程の凄腕の軍人だった。西国きっての逸材とも言われていた」  ファルスが相模のことを語り始めると同時に、ユウイは目を点にする。あまりにも想像がつかない。つかなすぎる。何故なら今その男は自分の上司で、あの相模隊長だからだ。 「軍人って……相模隊長が?」  ファルスはユウイの問いに頷いた。  医務室の窓から入ってきた風は、カーテンを揺らしながら通り抜けていく。 「魔法にも精通しており、西国統合の戦乱では政府側の英雄とまで呼ばれていた男だ」  ユウイには、にわかには信じられない話だった。しかし、ファルスが嘘を言うような人物ではない、ということも、なんとなく感じ取れる。 「でも、私相模隊長が戦闘してるところなんか見たことないです……いつもサボってて……」  正直な部下の言葉に、櫻庭とファルスは黙り込んだ。それを見ていたクロードが、またケラケラ笑いながら口を挟む。 「いやーっ、おっかし……でも、そろそろ4月も中旬頃ですし、相模の旦那も活動し始める頃ですよ」  櫻庭がぼそっと「虫かなんかかアイツは」と呟き、それを聞いたユウイが吹き出した。
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