第一章【隊長の、ヒミツ】

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 そしてまた、ピンポンパンポーンと本日数十回目のアナウンスが流れる。 【櫻庭 大和(サクラバ ヤマト)第三部隊副隊長、ユウイ・メシアズ隊員、至急第三部隊作戦室までお越しください】  櫻庭は舌打ちをして、ユウイはファルスとクロードに礼をして医務室を出ようとする。 「あ、ユウイ嬢。一応塗り薬出しときますので、助手に女子寮の部屋に届けるように言っておきますから」  そう笑顔で言うクロードにユウイはもう一度礼をして医務室を出る。 「ユウイ、と言ったか彼女は」  ファルスはクロードに向かい問いかける。クロードは頷き、またケラケラと笑う。 「今月入ったばかりの新人なのに、もう相模に慣れているようだな。適応力は素晴らしい」  机の上に平積みされている書類に目を通しながら、ファルスはそう呟いた。 「櫻庭の旦那の教育の賜物でしょうねぇ。一肌脱いでる感はありますよねぇ、ユウイ嬢の為に」  クロードは眼鏡をかけ、ファルスの前で白衣を脱ぐ。 「貴様は脱ぐな」  容赦のない右ストレートが飛び、クロードは地面に倒れた。どうやらファルスはあまり動かなそうな見かけによらず、俊敏のようだ。 「酷いなぁ……さすがに痛いですよー」  クロードのその言葉に、ファルスは少しだけ表情に苛々を見せる。しかし、諦めたのか溜め息をついた。 「……貴様は変わらんな」  それだけ言って、また書類に目を通す。長い白髪が風に揺れ、その真紅の瞳はまっすぐに一枚の紙を見つめていた。
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