第一章【隊長の、ヒミツ】

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 櫻庭が治療札という治癒の術式が書かれた札を使いユウイの止血を終え、何度か呼び掛けるが、ぐったりとして動かない。 「おい、メシアズ!! くそっ……相模、俺はユウイを連れて支部基地に戻る!」  櫻庭はそう叫び、札を数枚取り出そうとしたが、相模はその前に転移の魔法陣を発動させる。 「行け!」  相模は振り返らずそう叫ぶ。櫻庭が返事をする前に魔法は発動し、櫻庭とユウイの姿が消えた。  少年であった者と対峙する相模には、いつものような温和な雰囲気が漂っている。 【あははははは!! あの女の子の代わりに君が殺されたいの!?】  口も、頭すら無いのに誰が聞いていても不快な声を出す少年。しかし、相模は笑顔を崩さない。 「魔力で作り出した霧で幻覚を見せて俺達とユウイちゃんを離れさせる、ねえ。悪鬼のくせに理性があるね」 【君――ボクらと違うね? 同じだけど違う――君は何?】  ケラケラと笑うその声に、相模は露骨に不快そうな表情を示した。 「俺は君達とは違うよ。人の形すら満足にとれない君達とはね。ほら、中身溢れ出してるじゃない。戻さなくていいの?」  相模は構える様子もなく、余裕の表情を浮かべている。少年は痺れを切らしたのか、少年の首の切断部から黒い液体を硬質化させ、鋭い刃のようにして数十発発射する。
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