第一章【隊長の、ヒミツ】

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 発射された黒の刃が、相模の身体中を突き抜ける。  それは突き抜けた後も追尾性を持っていたのか二度、三度肌を貫いて骨を砕き、鮮やかな赤い血が相模の体から噴き出す。  明らかに重傷と思われる怪我だが、相模は笑顔でそれを受け続けている。  避けることもせず、黒の刃の攻撃は止まらない。  コートは破れ、真っ赤な血に染まっていた。  しかし、相模の膝は曲がらないどころか、少年に向かい歩みを進め始めた。その表情は笑顔。 【変だね君……悲鳴をあげないなんて】  相模は少年の疑問には答えず、左手を翳す。蒼い光を纏った白銀の長槍がいつの間にかその左手に掴まれていた。 「ごめんね、俺……痛みなんて感じたことないんだよ」  そう言ってクスクスと笑う相模に、少年が恐怖を覚えた頃には、長槍がその体を貫いていた。
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