第一章【隊長の、ヒミツ】

20/24
前へ
/279ページ
次へ
 相模は長槍を使い、ぬかるんだ地面に魔法陣を描く。  それは、東国の文字――【人、地、神】という文字が描かれた、相模が使っていた西国の魔法陣とは違う魔法陣だった。  もう動くことが出来なくなった、少年の姿を留めていない悪鬼に向かい、手を翳す。 「封印陣、発動」  風が巻き起こり、先程地面に描いた魔法陣――封印陣が浮き上がり、悪鬼を中心に回り始める。  やがて、銀色の光を纏った封印陣が悪鬼の体を溶かし、黒い姿が見えなくなったと同時に、相模の腕時計の中へ吸い込まれていく。 「これが【倒すことができない】上級悪鬼の封印の仕方なんだけど……ユウイちゃんには無理だよねぇ」  相模は独り言のようにそう言って、足元を見る。そこには、先程の少年の遺体が転がっていた。  悪鬼が全て損傷を引き受けて封印されるため、宿主には外傷は残らない。  これが上級悪鬼の特徴だった。人にとり憑き、人と同じような喋り方をして、欺く。そして、悪鬼を封印すれば宿主は昏睡状態か、憑いていた時間によっては今回のように死亡してしまう。 「……」  相模は少年を担ぎ上げ、彼の顔についた泥を指で優しく払い、即座に描いた転移の魔法陣を発動した。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

200人が本棚に入れています
本棚に追加