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「俺と相模があと一歩遅ければ、お前は死んでいた」
聞こえてきたのは、怒鳴り声などではなかった。櫻庭の冷静な低い声に、ユウイは肩をビクリと震わせる。
「……お前は何故鬼狩に入った」
その声に、ユウイは口を開く。
「私のお姉ちゃんと私が通う学園が……悪鬼に襲われて……他の人もたくさん死んでっ……お姉ちゃんも……私は何もできなかったんです。あの鬼狩隊員が来てくれるまで……ずっと物陰に隠れて泣いているばかりで……。だから、私は……お姉ちゃん達のような人達を作りたくないんです!」
悲痛に叫ぶユウイの声は、涙を堪えるように震えていた。それを配慮してか、櫻庭の声は優しい。
「……そうか。だがな、お前が死ねば意味がない。相模は部下の死を悼むことはしない。死ねばそれまでの奴だ、ということにされる。それが嫌なら抗え。姉達の仇を討ちたいなら。自分を変えたいなら。……稽古をつけることはできる」
「櫻庭副隊長……。はいっ!」
カーテン越しにでもわかる敬礼に、櫻庭は苦笑する。
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