序章【始まりの、ニンム】

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 そこに居たのは、黒い人型の化け物。人型と言っても、髪や鼻や口はなく、瞳だけが白く浮き彫りになっている。影のようにも見えるその風貌は、妖怪か魔物か。  この世界では、このような黒い化物を【悪鬼】と呼んでいる。 「じ、実体化してますよ櫻庭副隊長!?」  少女が腕時計に向かい叫ぶも、返事はない。どうやら、転倒した時に壊れてしまったらしい。  しかし、目の前のモノがそんなことを配慮してくれるはずもなく、ズリズリとにじりよっていく。それに合わせ、少女も後ずさったが、悪鬼は痺れを切らしたのか奇声を上げ腕を文字通り数メートル伸ばし、少女の首に絡み付かせ、絞めあげる。 「あっ……く……っ!!」  少女はなんとかして逃れようとするが絞めあげる力は強く、まったく離れる気配がない。次第に、少女の瞳が虚ろになっていき、もがく体から次第に力が抜けていく。
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