序章【始まりの、ニンム】

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 悪鬼は先程の炎の斬撃で深手を負ったのか、のたうち回りながら触手を使い櫻庭を襲う。  櫻庭はその全ての攻撃を見切り、最低限の動きでそれらをかわし、術式が描かれた札を悪鬼に向けて飛ばし貼り付けていく。その札は悪鬼の内部に吸収され、表面上からは見えなくなった。 「《爆・焔(バク・ホムラ)》!!」  その声と同時に、悪鬼が爆散する。黒い肉片が回りに飛び散り、そのまま地面に吸収されていった。 「さ、櫻庭副隊長、本当にありがとうございます!」  そう言いながら駆け寄ってきた少女に、櫻庭はチョップを下す。 「阿呆かお前はっ! 通話に夢中になってコケるな! そもそも俺は反対だったんだぞ、それを貴様が《じゃあ私が囮やります!!》とか自信満々で言うから――」 「す、すみません!」  長くなりそうな説教を遮るように少女は必死に頭を下げたが、どうやら上司の怒りは収まらないようだ。  説教しながら、説教されながら、任務を終え草原から引き上げていく様子はとても険悪には見えない。むしろ、仲が良いようにも見えた。 「聞いているのか、ユウイ・メシアズ!」 「はい! 聞いてます!」 序章【了】
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