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 ルカは疲れたな、と窓を見つめて思った。中庭に植えられた雑木は、伸びすぎた枝をついこの間ちょん切られ、せっかく肉をつけた枝の年輪を晒し、黙って立っていた。無邪気な小鳥が暢気に羽根を休め、囀ずっては飛んでいく。その拍子に揺れる緑が、どこか気だるげに見えた。ちょっと放っておいてくれないか。耳をすませば、そんな声が聞こえるような気がした。  ふと、葉と葉の奥に鳥がいたことに気がついた。緑色の、いや、まるで羽根の代わりに葉そのものを纏ったような鳥がひっそりと佇んでいた。思わずじっと見つめる。羽根には葉脈までしっかりとある――あれは間違いなく葉っぱだ。葉っぱが羽根の奇妙な鳥がそこにいた。羽は無惨にも虫に食われたように穴がそこら中にあいていた。 「先生、次の患者さん待ってますよ」  はっと我に帰れば白いカーテンから、看護婦が新たなカルテを押し付けきた。「今日は忙しいんですから、ぱっぱっと終わらせてくださいな」というお小言も添えて。振り返れば奇妙な鳥はいなくなっていた。  
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