正死審判課長グェントの始話

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だが、その均衡は白い紙雪崩の下から小さな細い鳴き声と人工的なオレンジの光が発生した瞬間に崩れ去った。 漆黒とパステルブルーの間から少しばかり白色が強い肌色とベビーピンク――つまりは人の手が出てきて、白い紙雪崩をごそりと掻き分け出したのである。 ガサガサ音を立てながら、その手は音と光の発生源らしき場所を的確に掻き分けていく。 乱雑ではあるが、左右に掻き分けを終了したその場所にあったのは受話器のないタッチパネル内線。 液晶画面をワンタッチすれば、受話器なんぞなくても簡単に電話出来る便利な機器である。 鳴り止まない内線のタッチパネルを手で叩くと、短い電子音が部屋に鳴り響く。 『――第三部署地獄行管理局地獄行記録管理課の唐津ですが、死因裁判局正死審判課のグェント局長は――』 『…………はい、私……です』 これが、冥界管理局第四部署死因裁判局正死審判課長 グェントの始話。
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