わたしとキリさんとアップリケ

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「ふん。今度はどうだエルー? これはもう可愛…「却下でお願いします」…って早ぇよ!」 あのやり取りから約3時間…キリさんはだいたい10分に1個の割合でアップリケを完成させてくるが、未だに惜しいと思った作品すら出てこない。 もうなんか全部作りは完璧のくせに、目が見開いてるとか歯茎が見えすぎとか鼻の穴が大きいとかばっかりなのだ。 このキリさんのセンス…最早ここまでくればある意味凄い才能ともいえるのかもしれないが、そのセンスを直接身につけなければならない私としては到底そんな物では納得できない。 「なんだよエルー! さっきから嫌だ嫌だ言いやがって! もう俺20個近く作ってるぞ!」 「…キリさんが私が可愛いと思える物が作れるまで作るって言ったんじゃないですか。 だいたいそんなに面倒と思うならもうアップリケなしで直してくださいよ…」 「それは嫌だ!」 「だから子供ですか!?」 それからバツの悪そうな表情をしながら次のアップリケ製作に取り掛かるキリさん。 「…まてよ……?……そうか!」 と思ったらまたこちらに向き直るキリさん。なにかその表情は"気づいたぞ!"という感じである。 「分かったぜエルー…… ……問題があるのはあんたのセンスじゃないのか?」 …どうして私はこの人が好きなのだろう。
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