わたしとキリさんとアップリケ

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「……もうあきらめてアップリケなしで直してくださいよ……」 「嫌だい嫌だい! 絶対アップリケありで直すんだい!」 「ハァー……」 もういい加減突っ込むのも疲れてきた私はため息をついて窓から見える空を見上げる。 私、スイさん、ファランさんの3人に全否定されながらも未だ自分のセンスを信じてアップリケを作り続けるキリさん。 まぁその成果はすでにアップリケの数が30の大台にのったところから簡単に判断できます。 ……というかこれホントにいつまでかかるのかなぁ…… そんな私の見つめる先の空はとても青く澄んでいた。 ただ真っ青な光景が広がっているだけではない。適度に雲も浮かび、空の青さを際立たせてもいた。 地上に降り注ぐ日の光もポカポカとしていてとても気持ちがいい……。 …………なんだか眠くなっちゃいましたね……。 その数分後には私は夢の中……。      † 「なぁこれならどうだエル……あれ? なんだよ寝ちまってるよ。 ……全く、あんたのためにやってるってのに……」 現在33作目のアップリケが完成したところで俺が振り向いてみると、エルーはスースーと寝息を立てていた。 ……しかし女の子の寝姿とは何で魅力的なのかね? まさしく天使の寝顔だ…… ドスッ!(エルーの蹴りがキリのわき腹に入る音……) ……訂正、天使は天使でも残酷なほうだ……まぁ可愛いから許すけど……。 「…………ん? まてよ……」 そんなエルーの寝顔を見ていると俺はふとあることを思いついた。 そして先ほど完成したばかりのアップリケを見る。 もちろんこれも俺のセンスが完璧に反映された自信作ではあるのだが、エルーのことだからまたどこかダメだししてくるかもしれない。 「…………」 少し考えてから俺はまたアップリケを作り始める。 この作品は……もうちょっと手を込んで作ってみてもいいかもしれない。
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