わたしとキリさんとアップリケ

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この時君が作ってくれたアップリケ… その時の君の顔がちょっと悔しかったけど、やっぱり何より嬉しかったよ。 それは、君が私のために一生懸命何かをやってくれたからなのかな……? 何をしてくれたんじゃなくて、何かをしようとしてくれる…。 それが1番私を幸せな気持ちにさせてくれるんだろうね。 だからこれは…一生の宝物にするね。 でもさ…………このときのことを思い出すと、どうしても私は……… 「……なあなあ、お前らさっきからなにしてんの?」 「あ、スイさん…」 私たちがホケっとしていると、暇そうな様子でスイさんが話しかけてきた。 まあ別に隠すことでも無いので私はスイさんに、これまでの経緯を話した。 「ふーん…で、これがそのアップリケ?」 するとスイさんはまじまじと私の袖についたアップリケを見る。 「これもしかしてエルーなのか? へぇーキリにしてはセンスよくできてんじゃん」 「失礼な。俺のセンスはいつでも素晴らしいものだぞ」 笑いながら話すスイさんに不満げに返すキリさん…。わたしもつられて笑ってしまった。 「あ………」 その時急にスイさんの表情が変わった。 しかもこの表情は見覚えがある。…そう、あのさくらんぼを樽で買いたいと言ったときと同じ表情だ。 「あ、あのスイさん……どうかしましたか?」 なぜか私の中で不安パロメーターがぐいぐいと上がってきていた。 「いやな、今ふと思ったんだがよ………… …………自分のアップリケつけてるやつって痛いよな」 「「………………」」 黙りこくる私とキリさん。 「……………………えーと…あのさ…」 しばらく沈黙が続いた後にキリさんは口を開く。 「その……なんだ…? ……………ドンマイ」 ………とりあえずぶん殴っときました。
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